「テストの点数が上がったら○○を買ってあげるね。」
それが子供の頭を悪くします。
子供がなかなか勉強しないので、困ったお父さんやお母さんたちは、ご褒美をあげて勉強させようとします。
「今度のテストで点数が上がったら○○を買ってあげるね。」と言います。
「やったー テストの点数があがったら○○買ってくれるんだってー。」と、まだ点数もあがっていないのに子供同士で自慢しているのを見かけることがあります。
このご褒美作戦、大きな間違いなのです。
ご褒美作戦を続けていると、将来子供は何かをもらわないと勉強しない、動かない子に成長します。
お父さんやお母さんは子供の「やる気」を引き出そうとしてご褒美を与えるのですが、結果は真逆のものになります。
ご褒美がやる気を削ぐ例として
子どもたちが道路掃除をしたとします。道が綺麗になったと喜んで掃除しているのですが、それを見た子どもたちの親は、ある時ご褒美を出すことにしました。
「道路を綺麗にしてくれた人には、ご褒美をあげます。」
すると何故だかみんな道路掃除をしなくなるのです。
脳が喜ぶ瞬間「わかった!」
脳が一番喜びを感じるのは、「わかった!」の瞬間です。
分からなかった事が分かる、知らなかった事を知る、それが脳が一番喜ぶことなのです。
私は「わかったの顔」と名付けているのですが、子供たちが何かを理解した瞬間の表情というのがあります。学校や塾の先生ならきっと分かると思います。あの表情のあの瞬間が一番脳は喜んでいるのです。
幼児は何でもかんでも学んでいます。
外食する時など大変でしょう? テーブルの上のものを何でも触る、何でも口に入れてみる、何でもひっくり返して見る。
これは全て学びです。
脳が喜んでいるので、どんどん学び続けます。
ところが、学校に入ると、途端に学びは楽しくなくなります。これは学校の先生や教育委員会や文科省の方々に、よく考えてもらいたいです。
あんなに学びが楽しかった幼児が、小学校に入った途端に勉強嫌いになるのは何故なのか。
というわけで、勉強が楽しくなくなった子供にご褒美を提示することになります。
子供は(大人もですが)ご褒美をもらうと喜びます。
ご褒美を喜ぶ脳の部分と”わかった“を感じて喜ぶ脳の部分は非常に近い場所にあるので、脳は分かった喜びとご褒美をもらった喜びとを間違って捉えるようになります。
分からない事が分かることよりも、何か求められる行動をしてご褒美をもらうことの方が簡単なので、人間の脳はそちらを求めるようになります。元々脳は怠け者で考えるということを避けるので、よりその傾向は強まります。
ご褒美が人間を駄目にする
脳の機能活動がどの部分で行われたのかを画像化するfMRIを使って2010年に実験が行われました。
2つのグループに課題を与えて、それを解決させるという実験です。
1つのグループには課題を解く前に報酬が提示されました。
どちらのグループでも、課題を解決すると参加者の脳はとても喜びました。
そして次の課題が与えられました。1回目と異なるのは、今回はいずれのグループにも報酬が無いということが先に伝えられました。
参加者は1回目と同じように課題に取り組み2回目の課題を解決しました。
その時の脳の状態は、ずっと報酬をもらっていないグループは2度目も喜びましたが、1回目に報酬をもらったグループは、課題を解決しても、脳は喜ばなかったのです。
分かった!という喜びが、ご褒美をもらう喜びにすり替えられていたのです。
子供にご褒美を与えると、学ぶ喜びが何かをもらう喜びにすり替わるということなのです。
そして何か報酬が与えられなければ勉強しない、動かないという状態が出来上がります。
駄目人間の出来上がりです。
私も一時は塾生に「問題集1冊終えたら○○ポイント」と報酬を与える指導をしていました。塾生の成績アップを実現しなければという大人の事情&自分の都合で指導をしていました。
そうやって高校入試を突破した生徒たちが、高校に入ると一気にやる気を無くして勉強しなくなることを不思議に思っていました。
自分自身が脳の働きなどを研究することなく、こういった事をしていたのですから、本当に馬鹿だったのですよ。
学びの喜びをなくすのはご褒美を与える大人なのです。